建設現場に欠かせない技術者として「監理技術者」という言葉を耳にすることがありますが、その具体的な役割や配置基準について、はっきりと説明するのは難しいですよね。
建設業界のニュースを追っていると、主任技術者との違いは何か、どのような工事に専任で必要なのか、資格はどうなっているのか、といった疑問が次々と湧いてきます。 特に、2025年からは金額要件などが改正されたと聞き、最新の情報を知っておきたいと思うようになりました。
私自身、この監理技術者という制度に非常に興味があり、色々と調べてみました。 建設業法という法律が深く関わっており、少し複雑な部分もありますが、工事の品質や安全を守るためにとても重要な役割を担っていることが分かってきました。
この記事では、私なりに調べた監理技術者の役割や、新しくなった配置基準について、ポイントを整理してご紹介します。 主任技術者との違いや、義務付けられている講習についても触れていきますので、監理技術者について知りたいと思っている方にとって、何かしらの参考になれば幸いです。
- 監理技術者と主任技術者の決定的な違い
- 2025年法改正による配置基準の最新金額
- 監理技術者に求められる資格と義務
- 配置義務に違反した場合のリスク
監理技術者の役割と改正後の配置基準

まず、監理技術者という存在の「役割(なにをする人か)」と、制度の基本的な部分について、私が調べた内容を整理します。 これは建設業法という法律で厳格に定められた、非常に重要なポジションです。特に2025年の法改正は、業界の現状に合わせて大きく見直された点のようです。
主任技術者との根本的な違い
建設現場の技術者と聞くと、「主任技術者」と「監理技術者」の2つがよく出てきますが、この違いを明確にすることが、制度を理解する最初の関門でした。
主任技術者とは?
主任技術者(しゅにんぎじゅつしゃ)は、建設業法上、工事の規模(請負金額の大小)や、元請・下請の立場に関わらず、原則としてすべての工事現場に配置が義務付けられている技術者です。 いわば、現場に必ず配置される技術責任者というイメージですね。主任技術者の主な役割は、自社が請け負った範囲の工事を適切に管理・監督することです。
監理技術者とは?
対して監理技術者(かんりぎじゅつしゃ)は、主任技術者の「上位互換」とも言える存在です。 主任技術者に代わって、より重い責任を担う監理技術者を配置しなければならないのは、以下の2つの条件を両方とも満たした場合に限られます。
監理技術者が必要となる2大条件
- 発注者から直接工事を請け負う「元請業者」であること。
- その工事のために結んだ「下請契約の請負代金総額」が、一定の金額(詳細は後述の配置基準で解説)以上であること。
つまり、監理技術者は「多数の下請業者を統括・管理する必要がある、大規模工事の元請」にだけ必要とされる、工事全体の技術的な統括責任者だと言えそうです。このため、より高度なマネジメント能力と広範な技術知識が求められるポジションです。
「特定建設業許可」との関係
ここで重要なのが「特定建設業許可」です。 上記2の条件(一定額以上の下請契約)を満たすような大規模工事を元請として受注すること自体、建設業法に基づく「特定建設業許可」を取得していなければ違法となります。
「一般建設業許可」のみの業者は、監理技術者が必要な規模の工事を元請として受注することはできません。 監理技術者の配置義務は、この特定建設業許可と表裏一体の関係にあるわけですね。
下請指導を含む法的な職務
監理技術者の役割は、ただ現場にいれば良いというわけではなく、建設業法(第26条の4)で具体的な「職務」が定められています。 「工事現場における建設工事を適正に実施するため、(中略)職務を誠実に行わなければならない」とあり、積極的な関与が求められています。
四大管理の統括
もちろん、工事全体の技術上の管理を統括する責任があり、一般的に「四大管理」と呼ばれる以下の業務が含まれます。
- 施工計画の作成 : 工事全体のマスタープランとなる施工計画を作成したり、下請業者の施工要領書をチェック・承認したりします。
- 工程管理 : 全体の工期を守るため、各下請業者の進捗を管理し、作業が競合しないよう調整します。
- 品質管理 : 設計図書や仕様書通りに、工事全体の品質(材料、施工方法、仕上がり)が確保されているかを管理・検査します。
- 安全管理 : 現場全体の労働災害防止対策を統括し、安全な作業環境を確保します。
下請業者への「指導監督」という最重要任務
主任技術者との最も明確で、かつ重要な違いが、下請業者への「技術上の指導監督」が法的な職務として明記されている点です。
監理技術者は元請の代表として、各下請業者が配置する主任技術者に対し、施工内容や安全・品質管理について具体的な技術的指導を行います。 下請業者間の施工の取り合い(作業の重複や隙間)を調整したり、技術的な問題点を解決に導いたりする、まさに工事全体の「司令塔」としての役割が求められています。
施工体制台帳など重要書類の管理
監理技術者が必要となるような大規模工事では、元請業者は「施工体制台帳」という重要書類を作成し、整備する義務があります。 これは、工事に関わるすべての下請業者の情報(会社名、許可番号、配置技術者など)を一覧にしたもので、適法な施工体制が組まれていることを証明するものです。
この施工体制台帳の作成・管理も、監理技術者が関わる重要な管理業務の一つとされています。
2025年法改正の背景と目的
私がこのテーマに興味を持ったきっかけでもあるのが、2025年2月1日から施行された、建設業法施行令の改正です。
改正前の課題:実態と乖離する金額要件
なぜ今、改正が行われたのか。背景には、「著しい建設コストの高騰」と「慢性的な技術者不足」という、建設業界が直面する2つの大きな課題があるようです。
近年、建設資材費や労務費が大幅に上昇しました。 その結果、改正前の金額要件のままだと、物価が上がる前なら中規模だった工事までもが、請負金額だけ見ると「大規模工事」として扱われてしまうケースが急増しました。
本来そこまで複雑ではない工事にまで、上位資格である監理技術者の配置や、現場への「専任」が法的に求められるようになってしまったのです。
改正の目的:技術者の効率的活用(生産性向上)
貴重な上級技術者が、実態以上に増えた「名ばかりの大規模工事」に縛り付けられてしまうと、業界全体で技術者が足りないという「人手不足」がさらに深刻化してしまいます。
そこで今回の改正では、この金額要件(下限額)を、現在の物価高騰の状況に合わせて引き上げることで、技術者の配置義務を現実的な水準に合理化・緩和しました。 これは、技術者をより効率的に活用できるようにし、業界全体の生産性を向上させることを目的とした、非常に重要な政策的な法改正と言えます。(出典:国土交通省『建設業の価格転嫁、ICT活用、技術者専任合理化について、新制度の導入に際して詳細を定めました』)
監理技術者の資格要件とは
監理技術者は、主任技術者よりも高度で広範な役割を担うため、誰でもなれるわけではありません。 建設業法で定められた、高度な資格要件を満たす必要があります。
そのためのルートは大きく分けて2つあります。
ルート1:1級国家資格等によるもの(主要ルート)
これが最も一般的かつ確実なルートです。担当する工事の業種に対応した、以下のいずれかの国家資格を有している必要があります。
- 一級建設機械施工技士
- 一級土木施工管理技士
- 一級建築施工管理技士
- 一級電気工事施工管理技士
- 一級管工事施工管理技士
- 一級造園施工管理技士
- 一級建築士
- 技術士(建設部門、電気電子部門など関連部門)
(※これらはあくまで一例です。業種ごとに詳細に定められています。)
ルート2:実務経験によるもの
一部の業種では、1級国家資格がなくとも、一定の学歴(指定学科の卒業)と豊富な実務経験(指導監督的実務経験を含む)を組み合わせることで、監理技術者資格が認められる場合があります。
実務経験ルートの注意点
この実務経験によるルートは、「指定建設業」(土木一式、建築一式、電気、管、鋼構造物、舗装、造園の7業種)では認められていません。 これらの業種で監理技術者になるには、ルート1の1級国家資格が必須となります。
また、指定建設業以外の業種であっても、学歴と実務経験の組み合わせ要件は非常に複雑です。 このルートを検討する場合は、発注者や許可行政庁、または建設業専門の行政書士などに個別に確認することが不可欠です。
資格者証と講習の2つの義務
1級国家資格に合格した(または実務経験が認められた)だけでは、すぐに監理技術者として現場に立てない、という点も非常に重要なポイントでした。
特に「専任」で配置される監理技術者として法的に認められるためには、「二重の鍵」とも言える2つの異なる手続きを完了し、両方を有効な状態に保っておく必要があるそうです。
1. 監理技術者資格者証(カード)
これは、その人物が上記A.の資格要件を満たしていることを証明する「身分証明書」にあたるカードです。 一般財団法人 建設業技術者センターに交付申請して取得します。
この資格者証は、現場に携帯する義務があり、発注者から請求があった場合には提示する義務があります。
2. 監理技術者講習(講習修了証)
これは、最新の建設業法、施工技術、安全・品質管理などに関する知識をアップデートするための「更新講習」です。 国土交通大臣の登録を受けた講習実施機関(例:一般財団法人 全国建設研修センターなど)で受講します。
「専任」で配置される監理技術者は、この講習を受講することが義務付けられており、その修了証(または資格者証の裏面への追記)には5年間の有効期限があります。 期限が切れる前に、必ず再受講しなければなりません。
コンプライアンス上の「二重の鍵」
この2つは、発行機関も目的も全く異なります。 現場でのコンプライアンス違反で非常に多いのが、「資格者証(カード)は持っているが、講習の有効期限が切れている」または「講習は受けたが、資格者証の交付申請をしていない・携帯していない」というケースだそうです。
どちらか一方でも欠けていると、法的には「専任」の監理技術者を配置したことにならず、後述する「配置義務違反」として重い行政処分の対象になりかねません。 企業側も技術者本人も、この「二重の鍵」の厳格な管理が求められます。
監理技術者の役割を支える配置基準

ここからは、今回の改正の核心とも言える「配置基準」について、より詳しく見ていきます。 つまり「いくらの工事から監理技術者が必要か?」「いつから専任が必要か?」という具体的な金額要件です。
実務で最も混同しやすく、かつ重要なのが、この2つの基準を「二重にチェック」することです。 2025年2月1日以降の最新情報として整理します。
配置が必要な下請契約額
まず、「主任技術者で良いか、それとも監理技術者が必要か」を判断するための基準です。
基準1:監理技術者「配置」要否の判断
これは、元請業者がその工事のために結んだ「下請契約の請負代金総額」で決まります。 自社が受注した金額(請負金額)ではない、というのがポイントです。
【基準1】監理技術者の「配置」が必要となる下請契約総額
元請として、以下の金額「以上」の下請契約を結ぶ場合、主任技術者に代えて監理技術者を配置しなければなりません。
| 工事の種類 | 改正前 (~2025/1/31) | 改正後 (2025/2/1~) |
|---|---|---|
| 建築一式工事 | 7,000万円 以上 | 8,000万円 以上 |
| 上記以外の工事
(土木一式、電気、管など) |
4,500万円 以上 | 5,000万円 以上 |
専任配置となる請負金額
次に、上記「基準1」とはまったく別の基準として、「専任」の基準があります。 これは、配置が決まった技術者(主任技術者または監理技術者)が、「他の現場と兼務しても良いか」、それとも「その現場に専属(専任)でなければならないか」を判断するための基準です。
基準2:技術者「専任」要否の判断
これは、「自社が受注した請負代金額」(元請・下請は問わない)で決まります。 「公共性のある重要な工事」(※個人住宅を除くほとんどの工事が該当)で、以下の金額以上の場合、技術者は「専任」で配置しなければなりません。
【基準2】技術者の「専任」が必要となる請負代金額
自社が受注した一件の工事の請負代金額が、以下の金額「以上」となる場合、配置する技術者(主任/監理)は「専任」である必要があります。
| 工事の種類 | 改正前 (~2025/1/31) | 改正後 (2025/2/1~) |
|---|---|---|
| 建築一式工事 | 8,000万円 以上 | 9,000万円 以上 |
| 上記以外の工事
(土木一式、電気、管など) |
4,000万円 以上 | 4,500万円 以上 |
実務上の最重要チェック:2つの基準の混同
建設業法のコンプライアンスにおいて、実務担当者が最も陥りやすい過ちが、この「基準1(配置)」と「基準2(専任)」を混同することです。 この2つは目的も対象となる金額も異なります。すべての工事を受注する際、企業は以下の4つのシナリオを個別に検討しなければなりません。
【4つの配置シナリオ】(例:土木工事の場合)
- 受注4,000万 / 下請3,000万基準1(下請5,000万)未満 → 主任技術者基準2(請負4,500万)未満 → 非専任【結果】非専任の主任技術者
- 受注6,000万 / 下請3,000万基準1(下請5,000万)未満 → 主任技術者基準2(請負4,500万)以上 → 専任【結果】専任の主任技術者
- 受注8,500万 / 下請8,000万(※建築一式工事の例)基準1(下請8,000万)以上 → 監理技術者基準2(請負9,000万)未満 → 非専任【結果】非専任の監理技術者 (※このケースは法改正で発生しにくくなりましたが論理的には存在します)
- 受注1億 / 下請9,000万(※建築一式工事の例)基準1(下請8,000万)以上 → 監理技術者基準2(請負9,000万)以上 → 専任【結果】専任の監理技術者
このように、必ず「配置」と「専任」の2段階で法的チェックを行うことが、重大な法令違反を防ぐ鍵となります。
兼務を可能にする補佐制度
深刻な技術者不足に対応するため、2020年の法改正で導入された緩和措置についても調べてみました。「監理技術者補佐」制度というものです。
特例監理技術者と監理技術者補佐
簡単に言うと、本来「専任(基準2)」が必要な現場であっても、一定の要件を満たす「監理技術者補佐」を代わりにその現場に専任で配置すれば、本来の監理技術者(この場合「特例監理技術者」と呼ぶそうです)は「専任」である必要がなくなり、最大2つの現場まで兼務しても良い、という特例です。
監理技術者補佐の要件
この「補佐」役は、誰でもなれるわけではありません。監理技術者を補佐するに足る、非常に高い能力が求められます。
- 資格要件:監理技術者になれる資格(1級国家資格など)を持つ者、または、この制度のために新設された「一級施工管理技士補」(1級施工管理技士の第一次検定合格者)であること。
- 雇用要件:配置する建設業者と「配置日以前に3ヶ月以上の直接的かつ恒常的な雇用関係」があること。
この制度は、単なる規制緩和ではありません。経験豊富なベテラン(特例監理技術者)が、将来有望な「技士補(補佐)」をOJT(オンザジョブトレーニング)で指導しながら2つの現場を管理するという、技術承継と人手不足対策を両立させるための戦略的な仕組みだと感じました。
配置義務違反の重い罰則
ここまで見てきたように、監理技術者の配置は建設業法で厳格に定められていますが、もしこれに違反した場合はどうなるのでしょうか。 調べてみて驚いたのですが、罰則(監督処分)が非常に重く設定されています。
配置義務違反に対する厳格な行政処分
ケース1:技術者を配置しなかった場合(無配置)
監理技術者(または主任技術者)を置くべき現場に、配置しなかった場合。これには、資格要件を満たさない無資格者を名目的に配置した場合も含まれます。 これは最も悪質な違反とみなされ、警告(指示処分)を経ずに、即座に「15日以上の営業停止処分」の対象となるようです。
ケース2:「専任」義務に違反した場合(非専任)
専任(基準2)が必要な現場に配置された監理技術者が、許可なく他の現場を兼務していた(専任義務に違反した)場合。 この場合は、段階的な処分が適用されます。
まず「指示処分」(違反状態を是正せよという行政命令)が出され、この指示に従わなかった場合に「7日以上の営業停止処分」が科されるとされています。
この罰則の違いは、法の優先順位を示しています。 法は、資格を持つ技術者を「配置しない」(ケース1)ことを、「配置したが運用を誤った」(ケース2)ことよりも、遥かに重大な違反(工事の安全と品質の根幹を揺るgあす行為)と位置づけているわけですね。
「営業停止」は、その期間、新たな契約締結や入札参加が一切できなくなる、企業経営にとって致命的なダメージとなり得ます。 たかが配置、されど配置。 法令遵守がいかに重要かが分かります。
ご注意ください
この記事は、私自身が建設業界の制度に興味を持ち、調査した内容をまとめたものです。 できる限り正確な情報(主に2025年11月時点のデータベース情報)を基にしていますが、法律の解釈や具体的な運用については、専門的な知識が必要です。
建設業法や関連法令は非常に複雑であり、改正も行われます。 実際の業務に関する正確な情報や最新の通達については、必ず国土交通省などの公式サイトをご確認いただくか、行政書士や弁護士などの専門家にご相談ください。
監理技術者の役割と配置基準の遵守
監理技術者の役割と配置基準について、2025年の最新改正内容を含めて調べてきましたが、いかがでしたでしょうか。
監理技術者とは、単なる現場監督という呼称ではなく、建設業法に基づき、大規模工事の品質と安全を元請の立場で法的に担保する「最高技術責任者」であることが分かりました。
そして、2025年の法改正によって、その配置基準(特に金額要件)が、物価高騰や人手不足といった現在の経済実態に合わせて合理化されました。 この新しい基準を正しく理解し、運用することが、今の建設業者には求められています。
企業にとっては、以下の3点がコンプライアンスの核心となると感じました。
- 「配置基準(基準1)」と「専任基準(基準2)」の二段階チェックを徹底すること。
- 「資格者証(カード)」と「講習(5年更新)」の「二重の鍵」の管理を徹底すること。
- 万が一にも「無配置」や「専任違反」といった配置義務違反(営業停止処分)を犯さないこと。
監理技術者の役割と配置基準の遵守は、法令を守るという受動的な義務に留まらず、発注者の信頼に応え、公共の安全を確保するという、建設業が社会に対して果たすべき本質的な責任そのものなのだと、改めて感じました。
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