MENU

経営セーフティ共済の裏ワザと節税活用法

経営者仲間と話していると、本当によく話題になるのが「経営セーフティ共済(倒産防止共済)」ですよね。   私自身、この制度については知ってはいたものの、最初は「取引先が倒産した時のための保険でしょ?」くらいの、かなり浅い理解しかしていませんでした。

でも、仲間の経営者から「あれは節税の裏ワザとしてすごいよ」と聞いて、よくよく調べてみることにしたんです。   すると、どうやら「経営セーフティ共済の裏ワザ」と呼ばれるような、本来の目的とは別の側面で、非常に強力な活用法があるみたいなんです。
特に、多くの経営者が頭を悩ませる決算期末の「節税」対策として、注目されているようですね。   掛金が最大で800万円まで積み立てられて、しかもその掛金を「前納(年払い)」という形で、最大240万円を一気にその期の損金にできるとか…。

ただ、そんなうまい話には何か裏があるかも、と疑うのが経営者の癖かもしれません(笑)。   そこでさらに深く調べました。節税になるのはいいけれど、解約のタイミングを致命的に間違えると、節税額以上の税金を一気に払う「税金爆弾」になる、とか。
だからこそ出口戦略として「赤字」の年に解約するのがセオリーだとか、いやいや本当のメリットは超低金利で使える「一時貸付金」制度の方だ、とか。   さらには、2024年の税制改正で「2年縛り」なんていう新しいルールも始まって、以前のような短期的な節税策は封じられた、なんていう穏やかでない話も。

この記事では、私なりに徹底的に調べた経営セーフティ共済の「裏ワザ」的な活用法と、その強力なメリット、そして知っておかないと本当に怖いデメリットや制度改正の注意点について、同じ経営者の目線で分かりやすく整理していきたいと思います。

  • 経営セーフティ共済の「節税」の本当の意味(=課税の繰延べ)
  • 決算間際に使える「前納」テクニックとその厳格な期限
  • 専門家が「真の裏ワザ」と呼ぶ「一時貸付金」制度の活用法
  • 2024年税制改正「2年縛り」の影響と、今後の「出口戦略」
目次

経営セーフティ共済の裏ワザ:節税と資金繰り

まずは、経営セーフティ共済がなぜ「裏ワザ」と呼ばれるのか、その核心部分である「節税」と「資金繰り」の2大メリットについて、深く掘り下げて見ていきましょう。   本来の目的は「連鎖倒産の防止」ですが、多くの経営者が加入する動機は、こちらの側面にあるのかもしれませんね。

節税の本質は「課税の繰延べ」

まず、この制度を検討する上で絶対に、絶対に誤解してはいけない大前提からお話しします。   私が一番重要だと感じたポイントです。

経営セーフティ共済の節税効果は、税金が「免除」されたり「消えたり」するわけではなく、本質的には「課税の繰延べ」である、という点ですね。

支払った掛金は、全額が損金(法人の場合)または必要経費(個人事業主の場合)になります。   これは国が認めている制度なので、もちろん合法的です。
年間最大240万円、累計では800万円に達するまで積み立てられるので、利益が大きく出ている年度の税負担を、将来に先送り(繰り延べる)できるわけです。

しかし、重要なのは「出口」です。   いつか必ず訪れる、制度を解約して「解約手当金」を受け取るとき。この受取額は、全額がその事業年度の「益金」または「事業所得」として課税対象になります。
つまり、掛金を支払うことで先送りしてきた税金を、解約した年にまとめて支払うイメージですね。

節税の本質:「課税の繰延べ」の仕組み

  • 支払う時(入口):掛金が全額損金になり、その年の課税所得が圧縮され、税金が減る。
  • 受け取る時(出口):解約手当金が全額益金になり、その年の課税所得が増加し、税金が増える。

→ 税金を「払わなくする(免税)」のではなく、「支払うタイミングを将来に先送りする(繰延べ)」制度なんです。

「税金爆弾」の恐怖

だからこそ、「いつ、どのように解約するか」という「出口戦略」の設計が、この制度を活用する上で最も重要になってくるわけです。   利益がすでに出ている黒字の年にうっかり解約してしまうと、その利益に加えて解約手当金(最大800万円)が丸ごと上乗せされます。
その結果、繰り延べてきた税金が一気に襲いかかり、節税どころかキャッシュフローを著しく圧迫する…この状態が、俗に言う「税金爆弾」です。

税務調査での「収益計上漏れ」リスクに注意

税務当局も、この「出口」を厳しくチェックしているようです。   特に、解約手当金を受け取ったにも関わらず、その全額を益金(収益)として計上していない「収益計上漏れ」は、税務調査で頻繁に指摘される項目のようです。

意図的でなくても、単純な経理ミスで計上漏れが発生すると、重いペナルティ(追徴課税)の対象となるリスクがあります。   出口戦略がいかに重要か、ということですね。

節税対策には様々な方法がありますが、この制度は特に「出口」を意識する必要がある、上級者向けの戦略かもしれません。

決算対策の「前納」はいつまで?

この制度を使った「裏ワザ」として、特に決算対策で多用されるのが「前納(年払い)」制度かなと思います。

決算月が近づいてきて、「あれ、今期思ったより利益が出すぎてるぞ…税金が怖い…」という、経営者としては嬉しいような悲しいような状況。   こんな時に、最大で1年分(月額20万円 × 12ヶ月 = 最大240万円)の掛金を、決算前に一括で前払いし、その全額を当期の損金として計上できるんです。
これは確かに強力な「駆け込み節税」ですよね。

手続きの具体的な流れと期限

ただし、ここでめちゃくちゃ大事な注意点があります。   それは「手続きの期限」です。「駆け込み」とは言っても、決算月の末日ギリギリに手続きしようとしても、絶対に間に合いません。

前納手続きのデッドラインは「希望月の5日」!

前納をしたい場合、『掛金前納申出書(様式T214)』という書類を、登録している金融機関の窓口などを通じて、前納を希望する月の「5日」(土日祝の場合は翌営業日)までに、運営元である中小機構に到着させる必要があります。

(例)3月決算の会社が、3月分から前納(年払い)したい場合

→ 原則として「3月5日」までに中小機構に書類必着が必須です。

かなりタイトですよね。決算予測はできるだけ早く立てて、2月のうちには動かないと間に合わない可能性が高い、ということですね。

前納の注意点(口座振替のみ)

もう一つの注意点として、前納の支払いは「口座振替のみ」で、銀行振込による一括払いはできないようです。   申出書が受理されると、その月の通常の掛金引落日(通常27日)に、1年分の掛金がまとめて引き落とされます。
残高不足にならないよう、口座の準備も必要ですね。

この期限と手続きのルールを知らずに、「決算月だからまだ大丈夫」と油断していると、240万円の損金を作るチャンスを逃すことになります。   計画的な準備が不可欠です。

裏ワザの真髄:一時貸付金制度

さて、節税(課税の繰延べ)もすごいですが、私が「これこそが真の裏ワザでは?」と感動したのが、この「一時貸付金」制度です。

これは、制度本来の目的である「取引先の倒産」とは一切関係なく、「急に運転資金が必要になった」「臨時に事業資金が必要になった」という場合に、無担保・無保証人で、自分が積み立てた掛金の範囲内でお金を借りられる制度です。

ここで絶対に混同してはいけないのが、本来の「共済金貸付」との違いです。

「共済金貸付」と「一時貸付金」の決定的な違い

この2つは、名前は似ていますが、中身は全くの別物です。特に「ペナルティ」の有無が決定的に違います。

項目 共済金貸付(本来の目的) 一時貸付金(裏ワザ)
利用シーン 取引先が倒産した時 臨時に事業資金が必要な時(理由は問われない)
ペナルティ 重大なペナルティあり

(借入額の10分の1の掛金が消滅)

ペナルティ一切なし
金利 無利子 年 0.9%(※R5.9.1時点)
借入限度額 掛金総額の10倍(最大8,000万円) 解約手当金相当額の95%(最大760万円)

「共済金貸付」のペナルティに要注意!

本来の「共済金貸付」(取引先倒産時に利用)には、重大なペナルティがあります。   それは、共済金の貸付けを受けると、「共済金貸付額の10分の1に相当する掛金の権利が消滅」してしまうことです。

例えば、5,000万円を借りた場合、積み立てた掛金のうち500万円が「没収」される計算になります。   これは非常に大きなペナルティですよね。

一方、「裏ワザ」として活用する「一時貸付金」には、このような掛金の権利消滅(ペナルティ)は一切ありません。   財務戦略として活用すべきなのは、間違いなく後者の「一時貸付金」です。

つまり、「節税のために掛金を積み立てつつ、もし急に運転資金が必要になったら、積み立てたお金を担保にするイメージで、ペナルティなしで超低利で借りられる」という、まさに経営のセーフティネットとして機能するわけです。

一時貸付金の驚異的な低金利

「一時貸付金」がなぜそんなに「真の裏ワザ」と言われるのか。   それは、その金利の低さにあります。

年0.9%という金利水準

なんと、利率は年0.9%です。(出典:中小機構 よくあるご質問 ID:187 ※令和5年9月1日時点)

ゼロ金利政策が終わり、世の中の金利がじわじわと上がり始めている中で、この利率は驚異的かなと思います。   無担保・無保証人でこの条件は、通常の金融機関やビジネスローンではまず考えられない、破格の条件ですよね。

借入限度額の計算方法

どれくらい借りられるかというと、その時点での「解約手当金相当額」を基準に計算されます。   掛金納付月数が40ヶ月(3年4ヶ月)以上で、掛金総額が上限の800万円に達していれば、その95%にあたる最大760万円まで借り入れが可能です。

納付月数が40ヶ月未満の場合は、解約手当金の支給率(後述します)に応じて、借入限度額が少し減ります。

掛金納付月数 借入限度額の計算式 (参考)解約手当金支給率
1~11ヶ月 利用不可 0%
12~23ヶ月 (掛金総額 × 80%) × 95% 80%
24~29ヶ月 (掛金総額 × 85%) × 95% 85%
30~35ヶ月 (掛金総額 × 90%) × 95% 90%
36~39ヶ月 (掛金総額 × 95%) × 95% 95%
40ヶ月以上 (掛金総額 × 100%) × 95% 100%

一時貸付金の最強の活用イメージ

(1) 節税:年間240万円の掛金を支払い、全額損金にして課税所得を圧縮する。(法人税率30%なら約72万円の税負担を繰延べ)

(2) 資金調達:事業で急な資金が必要になったら、積み立てた掛金(最大800万円)を担保にするイメージで、最大760万円を「年利0.9%」で借りる。

→ 節税のためにプールしたお金を、実質的なゼロ金利(むしろ税負担軽減分を考えればプラスかも)で、必要な時に運転資金として活用できる、ということですね。   これは本当にすごい制度設計だと思います。

掛金800万円までの節税効果

この制度の掛金についても、基本的なルールを押さえておきましょう。

月額変更の柔軟性

掛金は月額5,000円から20万円までの範囲で、5,000円単位で自由に設定・変更できます。   会社の業績に合わせて、利益が出ている時は増額し、苦しい時は減額する、といった柔軟な対応が可能です。   (ただし、減額の手続きは締切日が厳格に定められているので注意が必要です)

そして、累計の掛金上限は800万円と定められています。

月額20万円のMAXで積み立てていくと、40ヶ月(3年4ヶ月)で上限の800万円に達します。   この800万円が損金または必要経費として計上できるわけですから、その節税効果(課税の繰延べ効果)は非常に大きいです。

例えば、法人税率が実効税率で30%だとしたら、単純計算で 800万円 × 30% = 240万円 の税金を「将来に繰り延べられる」ことになります。

上限800万円到達後のメリット

「じゃあ、800万円積み立てたら、もう終わり?」と思うかもしれませんが、そうではありません。

800万円積み立てた後も「お守り」として機能

掛金が上限の800万円に達した後も、解約しない限りは共済契約は継続します。

  1. 掛金の拠出はストップします(追加の支払いは不要)。
  2. 「一時貸付金」制度は引き続き利用可能です(最大760万円の融資枠をキープ)。
  3. 万が一取引先が倒産した際の「共済金貸付」(最大8000万円)の権利も保持されます。

つまり、800万円を「万が一の時の運転資金の源泉」として、超低コスト(というか掛金支払不要)でキープし続けられる、最強の「お守り」兼「融資枠」になるとも言えそうですね。

経営セーフティ共済の裏ワザと2024年改正

ここまで「裏ワザ」的なメリットばかり見てきましたが、当然ながら物事には表と裏があります。   デメリットやリスク、そして最近の「改正」による重大な変更点をしっかり押さえておかないと、本当に危険です。
特に「短期的な節税」だけを考えて加入すると、大きな落とし穴にはまる可能性があります。

【最重要】制度利用に関するご注意

この記事で紹介している内容は、私自身が調査した情報や一般的な見解に基づいています。   制度の詳細は非常に複雑であり、変更される可能性もあります。
税務上の取り扱いや制度の詳細は、必ず運営元である中小機構の公式サイトで最新情報を確認してください。

また、税務判断は非常に専門的で、個々の会社の状況によって最適解が全く異なります。   具体的な節税対策や出口戦略については、必ず顧問税理士などの専門家にご相談の上、自己責任で判断していただくよう、強くお願いします。

デメリット:40ヶ月未満の元本割れ

この制度、最大のデメリットであり、加入前に絶対に理解しておくべきなのが「元本割れリスク」です。

「どうせ課税の繰延べなら、すぐ解約しても同じでしょ?」と思いがちですが、そうはいきません。   掛金を納めた期間が40ヶ月(3年4ヶ月)未満で「任意解約(自己都合の解約)」をすると、解約手当金の支給率が100%に満たず、支払った掛金の総額よりも戻ってくるお金が少なくなる=元本割れしてしまいます。

特に恐ろしいのが、加入から12ヶ月未満での任意解約です。   この場合、支給率はなんと0%。つまり、支払った掛金は1円も戻ってこない「全額掛け捨て」になってしまいます。

解約の種類と支給率

解約手当金の支給率は、「掛金納付月数」と「解約の事由」によって細かく定められています。

掛金納付月数 任意解約

(自己都合)

みなし解約

(事業終了など)

機構解約

(ペナルティ)

1~11ヶ月 0% 0% 0%
12~23ヶ月 80% 85% 75%
24~29ヶ月 85% 90% 80%
30~35ヶ月 90% 95% 85%
36~39ヶ月 95% 100% 90%
40ヶ月以上 100% 100% 95%

この表から分かる通り、自己都合の「任意解約」で元本(100%)を確保するには、最低でも40ヶ月(3年4ヶ月)の継続が必須ということです。   短期的な資金繰りの悪化などで、40ヶ月未満で解約せざるを得なくなると、節税どころか大きな損失を被ることになります。

「みなし解約」と「機構解約」とは?

表に出てきた他の解約事由についても、簡単に触れておきます。

解約事由の違い

  • 任意解約:契約者の自己都合による、最も一般的な解約です。
  • みなし解約:個人事業主の死亡、法人の解散・会社分割・事業の全部譲渡など、事実上の事業終了に伴う解約です。   任意解約より支給率が少し優遇されていますが、40ヶ月未満は元本割れします。
  • 機構解約:掛金を12ヶ月分以上滞納した場合や、不正行為があった場合の「強制解約」です。   支給率が最も低く、ペナルティ的な意味合いが強いです。

つまり、この制度の「裏ワザ」を活用しようと思うなら、最低でも40ヶ月(3年4ヶ月)は絶対に解約しないという長期的な視点と、それを継続できるだけの財務的な体力(忍耐)が必須、ということですね。

2024年改正「2年縛り」とは

そして、もう一つの超重要トピックが、2024年度の税制改正(令和6年10月1日施行)です。   これにより、これまで「裏ワザ中の裏ワザ」として行われていた短期的な節税策が、事実上封じられました。

通称「2年縛り」ルールと呼ばれています。

改正前は「短期の利益調整」が可能だった

改正前(令和6年9月30日以前の解約)は、極端な話、以下のようなサイクルを回すことが可能でした。

「(1) 利益が出た年に800万円まで積む → (2) 翌年(赤字の年)に解約して受け取る → (3) すぐに再加入して、また利益が出た年に積む」

このように、解約と再加入を繰り返すことで、短期的に利益を調整する(課税を繰り延べる)ことが可能だったんです。

改正後の「2年縛り」の影響

しかし、改正後(令和6年10月1日以降の解約)は、この「短期サイクル」が不可能になりました。

具体的には、一度解約すると、その解約の日から2年間は、たとえ再加入して掛金を支払っても、その掛金を損金または必要経費に算入できなくなりました。

この「損金算入できない」期間に支払った掛金は、税務上「資産計上」として扱われます。   つまり、節税効果が完全にゼロになるということです。

フェーズ 改正前(R6.9.30以前の解約) 改正後(R6.10.1以降の解約)
加入中 掛金 = 損金算入 掛金 = 損金算入(変更なし)
解約年 解約手当金 = 益金算入 解約手当金 = 益金算入(変更なし)
解約後、即再加入 損金算入 可 損金算入 不可(資産計上)
解約から2年以内 損金算入 可 損金算入 不可(資産計上)
解約から2年経過後 損金算入に復帰

「2年縛り」改正の結論

この改正によって、「解約しては再加入」という短期的な利益調整(「裏ワザ」)は、完全に不可能になりました。

今後の解約は、「役員退職金に合わせて引退する」といった、本当に事業の大きな節目で行う「一度きりの最終的な出口戦略」としての意味合いが、極めて強くなったと言えそうですね。

最適な解約のタイミングを解説

では、その「最適な出口戦略」とは何でしょうか。   大原則は、何度も言うように「解約手当金(益金)を受け取る年度に、それを相殺できるだけの大きな損金(赤字)をぶつける」ことです。

もし何の対策もなく黒字の年度に800万円の解約手当金(益金)を受け取ってしまったら、その800万円にドカンと税金がかかってしまいます。   まさに「税金爆弾」のスイッチを自分で押すようなものですね。

税務調査での「収益計上漏れ」リスク

前述しましたが、この「出口」でのミスは、税務署を監督する会計検査院の調査でも「返戻金(解約手当金)の収益計上がなされていない」という経理ミスが頻繁に指摘されている、非常にリスクの高いポイントです。

「益金計上漏れ」は致命傷に

解約手当金が振り込まれた年度に、それを「益金」として収益計上するのを忘れる(あるいは意図的に行わない)と、税務調査で重大な指摘事項となり、悪質な場合は重加算税などの重いペナルティが課される可能性があります。

解約する年度の益金計上は、絶対に忘れてはいけない、ということです。

そうならないために、以下のような「損金(赤字)」が発生するタイミングで解約するのが、安全かつ効果的なセオリーとされています。

出口戦略:赤字年度との相殺

最もシンプルで基本的な出口戦略は、業績不振、先行投資などで「赤字」が見込まれる年度に解約することです。

ケース1:業績不振や先行投資

例えば、ある事業年度の業績不振による赤字が800万円だったとします。   その年度に経営セーフティ共済を解約して800万円の解約手当金(益金)を受け取れば、

益金 800万円 - 赤字 800万円 = 課税所得 0円

となり、赤字と益金が相殺されて、その年度の課税所得をゼロに近づけることができます。将来に繰り延べてきた税金を、実質的にゼロにできる(=免除されたのと同じ効果を得られる)わけです。

ケース2:大規模修繕・設備投資

赤字の年でなくても、計画的に大きな損金を作る方法もあります。   それが、「大規模修繕費」や「設備投資」です。

例えば、数年おきに発生することが分かっている工場の修繕や、社屋の補修、高額な機械設備の入れ替えなど、多額の損金が突発的に発生するタイミングに合わせて解約手当金(益金)をぶつけることで、課税所得の平準化を図ることが可能になります。

出口戦略:役員退職金と相殺

そして、「裏ワザ」の出口戦略として、最も効果的かつ「王道」とされているのが、経営者(役員)の退職金の原資として充てる方法です。

「退職所得控除」の絶大な効果

この方法がなぜ「王道」なのか。それは、「会社(法人)」と「経営者(個人)」の両方にとって、税負担を劇的に最適化できる可能性があるからです。

仕組みは以下のようになります。

  1. 経営者が退任する事業年度に、経営セーフティ共済を解約する。   → 会社に「解約手当金(益金)」が入る。
  2. 同じ事業年度に、会社から経営者へ「役員退職金(損金)」を支払う。
  3. 【会社側】 : 「解約手当金(益金)」と「役員退職金(損金)」が同年度内で相殺され、課税所得が圧縮される。
  4. 【個人側】 :  受け取った退職金は「給与所得」ではなく「退職所得」として扱われる。   退職所得には、勤続年数に応じた極めて優遇された「退職所得控除」が適用されるため、個人の所得税・住民税の負担が大幅に軽減される。

給与や役員報酬で800万円受け取るのと、退職金で800万円受け取るのとでは、個人の手残りが全く違ってきます。   この「退職所得控除」の活用こそが、この戦略のキモですね。

成功させるためのタイミング

ただし、この戦略を成功させるには、タイミングが命です。

タイミングの一致が必須

役員退職金は、原則として「株主総会の決議によって退職金の額が具体的に確定した日」の属する事業年度に損金算入されます。

この「損金計上のタイミング」と、解約手当金の「益金計上のタイミング」(原則、入金日または支給決定通知日)を、必ず同じ事業年度内に収める必要があります。

このタイミングが1期でもズレてしまうと、片方の年度で莫大な利益(または損失)が出てしまい、戦略が破綻します。   実行する際は、税理士さんと綿密な打ち合わせが不可欠です。

経営セーフティ共済の裏ワザ総括

ここまで、経営セーフティ共済の「裏ワザ」について、私なりに調べて感じたことをまとめてみました。

経営セーフティ共済の裏ワザは、2024年10月の「2年縛り」ルール導入によって、その性質を大きく変えたな、というのが私の結論です。

「解約と再加入を繰り返す」ような短期的な利益調整テクニック(節税)は、もはや過去のものとなり、有効な戦術ではありません。

しかし、依然としてこの制度にしかない、極めて強力な「裏ワザ」は健在です。

今も有効な、経営セーフティ共済の2大「裏ワザ」

  1. 超低利の資金調達(一時貸付金) : 掛金を全額損金にしつつ、その積立額を原資に「年利0.9%」で運転資金を調達できるという機能。   これは今回の税制改正の影響を一切受けていません。
    他のいかなる金融商品にもない、圧倒的なメリットだと思います。
  2. 長期的な出口戦略(退職金など) : 「最低40ヶ月の継続」と「2年縛り」を前提に、役員退職金の支給や、大規模修繕など、明確な「出口」を長期的に設計できる企業にとって、本制度は依然として最強クラスの「課税繰延べ」ツールであり続けます。

結論として、経営セーフティ共済の「裏ワザ」は、短期的な節税テクニックから、「長期的な財務戦略」へと移行した、ということですね。   経営者は、最低40ヶ月(3年4ヶ月)の継続、明確な出口戦略の設計、そして「2年縛り」という新ルールを正確に理解した上で、この強力な制度を戦略的に活用すべきだと感じます。

最終的な判断は必ず専門家とご相談を

繰り返しになりますが、この記事はあくまで私個人の調査に基づくものであり、税務上の助言を行うものではありません。   制度の解釈や税務の取り扱いは非常に複雑で、個々の企業の状況によって最適な判断は全く異なります。

制度の利用を検討される際は、必ず中小機構の公式サイトで最新情報を確認し、顧問税理士などの専門家と十分に相談した上で、ご自身の責任において判断していただくよう、お願いします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次